前回の記事の最後の部分で、アメリカの大学生のバイトや就活の事を少し書いたのですが、今回はそれと関連した学歴の話をしたいと思います。
『自由の国アメリカ』『アメリカンドリーム』というイメージからすると意外に思われるかもしれませんが、アメリカはかなりの学歴社会です。
アメリカの社会が日本よりも学歴を重視する理由は主に2つあると思いますが、1つは、学歴がその人の能力をほぼ適正に反映していることです。
ひとつ前の記事で書いたように、アメリカのハイスクール(義務教育)も大学も入学するのは難しくない(希望者にはできるだけチャンスを与える)けれど、卒業するのは難しいです。
プラグマティズム(実際主義)の国であるアメリカの学校は、机上の勉強だけではなく実務も教育するので、日本の高校や大学と違って、頭がいい、暗記が得意、なだけではいい成績が残せないような仕組みになっています。
また、留年や飛び級の制度もあるので、卒業の資格や学位を持っているという事は、その人が卒業基準を満たす能力を持っていて、尚且つある一定の努力をしてきた事を意味します。
ハイスクールを例にあげると、日本の義務教育終了(中卒)と違って、アメリカのハイスクール卒(の学位や資格)必要な年限を過ぎれば無条件に授与されるものではないです。
ある程度の学力やスキルの基準をクリアしていないとディプロマ(学位)もサーティフィケート(資格)も取ることはできないです。
そのため、日本では高卒は専門学校卒などと同じ資格として扱われますが、アメリカではハイスクール卒(ディプロマ取得)は学位として扱われています。
アメリカは移民が土地を開墾して西へ領土を広げてきたパイオニア(開拓者)の国なので、社会共通の価値観として、ハードワーク(勤勉)や公平の精神がが高く評価されているため、高卒のディプロマ(学位)もサーティフィケート(資格)を持たずにハイスクールを辞めるドロップアウトは、(一見日本の高校中退者と同じように思えるかもしれないけれど、)アメリカはハイスクールまでは義務教育で、学費が無料、低所得者には(朝と昼の)給食費免除、不法移民の子どもですら高校に通って卒業できるし、障碍者への配慮も法律で義務付けられているし、学校に通えないならホームスクールでも単位が取得できるなど、本人の意欲があれば、学位か資格かが取れるようなチャンスが与えられる仕組みのため、ハイスクールのドロップアウト者は怠惰・素行不良と見なされて、社会保障(健康保険や失業者保険など)のない最低賃金の仕事に就かざるをえなくなるなど、就職や経済的にかなり不利になります。
大学や短大の場合は修業年限がないので、入学したものの卒業できない場合は(私のように)長期休学していることになります。
希望の学校や学部や専攻の単位を取るのが難しくて卒業できそうもない場合は、卒業単位を取るのが簡単な学校や学部や専攻に変更することもでき、その場合は同じレベルの学位でも、学歴の評価は下がります。
裏返せば、ちゃんとしたカリキュラムのある学校で、(医学部など)レベルの高い学部や専攻で学位を持っていると、かなりの確率で高収入の職にありつける可能性が保障されています。
アメリカで学歴が重視されるもう1つ理由としてあげられるのは、学歴が選別の目安(差別の隠れ蓑)として使われていることもあることです。
この理由の背景について詳しいことを書くと、学校教育の話題から逸脱してしまうので、いつか機会があったら記事にするつもりなので、この記事では学歴が就職の際の選別にどのように影響しているかだけを説明します。
アメリカは移民の国で(建前は)平等や公平を謳っているためなのか、求人の時に人種や年齢や性別で制限を設けることが禁止されています。
企業に提出するレジュメ(履歴書)も写真の添付や年齢の記入を必須条件にできないことになっています。
(写真を添付させると性別や人種がわかってしまうし、ある程度の年齢もわかる)
雇用者は自分たちに都合のいい条件の人を探したいわけで、意識的に差別するつもりはなくても、候補者が似たような条件だったら白人、男性、裕福な家庭の出身者、年齢がより若い人という条件のどれかがが採用の決め手になる傾向はあります。
職歴からある程度の年齢、名前から性別を推測することはできても、裕福な家庭の出身者かどうかまではわかりません。
その点学歴からは、どの大学を卒業したのかで、申し込み者の努力や才能もさることながら、経済的な背景を推し量ることができます。
アメリカの大学(特に私立や有名大学)は学費が高いので、出身大学や学位で卒業までのお金を工面できる(そこそこの成績で経済的に裕福か、奨学金がもらえるほど成績が良い)事が推測できます。。
例えば、アイビーリーグ卒の学生は白人の裕福な家庭の出身者が多いとか、ハイスクールのドロップアウトはスラム街の出身者や(アジア人以外の)有色人種に多いなど、出身校や学歴にはある一定の傾向があります。
おまけに、学歴でふるい分けるのは能力による選別という大義名分があり、差別とは見られないメリットもあります。
以上、3回に分けて一般的なアメリカの学校教育について書きましたが、伝えたい情報が沢山ありすぎて書ききれなかった部分もあるし、住んで経験してみないとわからない事も多いので、文字でどれだけ伝わったか、誤解を生んでいないか不安です。
日本って・・・
返信削除投稿: ミッサリー | 2016年9月 7日 (水) 10時07分
>ミッサリーさん
削除訪問&コメントありがとうございます。
日本の学校とアメリカの学校ってかなり違いますよね。
特に大学が…
投稿: yuuki | 2016年9月 8日 (木) 23時03分
yuukiさん、お邪魔します。
返信削除これだけの長文、書くの大変だったでしょう?
それぞれの国によって文化は違います。
住んでいない人間に理解は、難しいと思います。
経験していない事の理解は、難しいですよ。
これだけ、細かく書かれているのを読めば、
アメリカって国は、そうなんだ~と解かると思います。
それを比較したり、非難するのは違うと思いますよ。
私は、留学経験があります。
日本の教育は「暗記」
欧米の教育は「自立」だと感じました。
学ぶとは、自らの力で得るものだと感じました。
国民性が出ていて面白いとも思いましたよ。
≫誤解を生んでいないか不安です。
これだけ、細かく書かれているのですから大丈夫ですよ(^^)v
これでも、何かケチ付ける人がいたら放って置く方が良いと思います。
あまり、深追いはしない方がと思います。
お疲れ様でした(^^)v
投稿: エルザ | 2016年9月 7日 (水) 13時20分
いや~^^;お恥ずかしいです^^;
削除私のブログは、自己主張が強くて、いつもお友達をヒヤヒヤさせています。
ちょっと言葉を選んだり、文末を柔らかくしないとと思っています。
私が、留学したのは30年以上前のことです。
短期留学でしたが、Los Angelsです。
学科の中に他州で受ける講義もあり色々な州に行きましたね。
軽い気持ちで留学しましたが、周りの学生を見て戸惑いました。
この国は、ボーっとしてちゃいけない国なんだと思いましたよ^^;
留学経験が、今の私を作っていると思います。
とても良い経験でした。
投稿: エルザ | 2016年9月 9日 (金) 13時17分
>エルザさん
削除訪問&コメントありがとうございます。
LAに留学されていたんですね。
30年前だと、写真なしのスタンプのビザですよね。
あの頃はビザなし渡航もまだなかったような…
懐かしいです。
投稿: yuuki | 2016年9月13日 (火) 03時10分
は~つくづく違うんだなあ^^;
返信削除努力することで自分の未来を切り開く
日本ではせっかく努力して難関大学に合格しても
犯罪(特にひどいのは性犯罪・薬物)を
犯してしまい台無しにするバカも少なくない
留年や飛び級制度が日本に向いてるかどうかは別として
大学の卒業に関してはもっと厳しくした方がいいと思うなぁ・・・
投稿: Lino | 2016年9月 7日 (水) 16時19分
>Linoさん
削除訪問&コメントありがとう~
日本も昔(戦前)は留年も飛び級もあったのにね。
教わっている内容が全然理解できていないのに進級させる日本の今の教育制度はおかしいと思うよ。
本人のためにもならないし、教える側の教師だって、生徒の理解度がどうあれ進級するんだから、自分のクラスから留年者続出→教師の(教え方の)能力を問われることもない。
大学の卒業要件といえば…
アメリカの大学では、カンニングや盗用(他人のレポートをうつしたり、出所を明確にせずに引用する)事は重罰ですよ。
1回目は警告されて0点になり、2回目以降は退学です。
日本の大学はレポートを写したりすることに寛容だから、アメリカ並みに厳しくしたら、殆どの学生が退学になっちゃうかもね。
投稿: yuuki | 2016年9月 8日 (木) 23時03分