2017年4月15日土曜日

AT車とMT車
発達障害を理解するためのモデル2


 以前の記事でも、発達障害を理解するために独自で考えたモデルについて書いた事があったのだけれど、今回は発達障碍者の学習プロセスをAT(オートマティック)車とMT(マニュアル)車の運転になぞらえて説明をしてみようと思います。

(←①)

 自動車の変速装置はATとMTだけでなく色々種類があるけれど、この記事では大雑把にAT車(=手動でギアをチェンジしなくてもOKな車)とMT車(=手動でギアを変えなければならない車)の2種類に分けることにします。

(←②)

 定型発達の人の脳の仕組み(?)はAT車に似ています。

 AT車は半クラッチとかエンジンの回転数とかギアの変更のタイミングとか、何も考えなくてもギアをドライブモードに入れてブレーキを外してアクセルペダルを踏めば前へ進みます。
 クラッチの操作やギアチェンジをしなくてもいいので、ハンドル操作や周りの状況に集中できて、運転の初心者でも比較的容易に運転することができます。

 定型発達者の脳(?)は新しい経験をする時に、特に努力をしなくてもほぼ自動的に適切なギアに切り替わるので、新たに経験していることのみに意識が集中しやすく、効果的に学んだり対処したりする事が容易にできます。

(←③)

 一方で、発達障碍の人の脳の仕組みはMT車のように、車を前進させるだけのために、ブレーキとアクセルの操作の他にも、クラッチの操作、ギアの操作とそれらのタイミングを合わせる必要があり、それらが全部適切に行われないとエンストしてしまったりします。

 ハンドル操作やスピードコントロールの他にも、常時クラッチ操作やギアのシフトなどにも気を配らなければならず、運転に慣れない初心者は状況に気を配っている余裕までは殆どない状態です。
 MT車をスムースに運転できるようになるまでには、AT車よりも長い訓練の時間や多い回数が必要になってくるのと同じように、発達障碍者が定型発達の人と同じような行動パターンを身につけるにはより多くの時間と経験が必要になってきます。

(←④)

 車はAT車からMT車へ、逆にMT車からAT車へと乗り換えることができますが、現代の科学では人間の脳の仕組みは入れ変えられないので、MT車脳(発達障害の脳)に当たっちゃった場合は、面倒だけれど乗りこなせるように(使いこなせる)ように慣れるしかないのが現状です。
(個々の持っている能力によって、慣れて使いこなせない場合もあるけれど…)

 また、AT車とMT車が外から見ただけでは見分けがつかないように、定型発達者と発達障碍者は外見からだけでは見分けがつきにくいです。
 車なら運転席を覗いてみれば区別はつくのですが、区別がついたところでうまく運転ができるかどうかというのは別問題で、AT車しか乗ったことのない人がMT車の運転を指導するのはまず無理です。

「クラッチペダルがついてるの?ギアは自動で切り替わらないの?なんか面倒そうだねぇ~」
とは思うものの、それがどれだけ面倒なのかおそらく理解できないのではないかと…

(←⑤)

 中にはAT車の操作方法でMT車も動くと思う人もいて、定型発達のやり方(学習プロセス)を押し付けてくる人もいたりして…

AT車の操作方法を何百回教えてもらったって、その方法ではMT車は動かない
と、いうことに発達障碍者自身も関わっている定型発達者も気がつくことが大切だと思います。

「普通の車はそうすると動くんだよ。だから試してみなよ。動かないとしたら、その車壊れてるんだよ。」
と、サラッといってのける人もいます。

 確かに日本の車の99%はAT車だから、”普通”はその方法で動くでしょう。
残りの1%はオートマの操作の方法で動かないが、動かないからといって壊れているわけではない
 けれども、何度も「おかしい壊れてる」と、言われ続けると、本当に壊れているんじゃないかと疑心暗鬼に陥って自信をなくす(二次障害)ことも起こってきます。

(←⑥)

 MT車は運転に慣れるまで時間はかかるけれど、操作のコツを呑みこんで練習を積めば、交通の流れに沿って問題なく走行できる(定型発達が多数の社会でも支障なく行動できる)ようになるでしょう。

 後部座席に乗る(親しく付き合う)とギアの切り替えの時などにMT車だとわかる(少し違和感がある)こともあるだろうけれど、走行しているのを外から見ただけ(知り合い程度の付き合い)では、AT車(定型発達者)との見分けもつかないくらいまで乗りこなせるようになると思います。  

(←⑦)

 坂道発進が難しかったり、渋滞に巻き込まれると運転が面倒だったりというデメリットもある反面、MT車じゃなければできない走り方もあるし、アクセルとブレーキを踏み間違っても暴走しにくいなどのMT車ならではのいいところもあります。

 AT車の方が運転は楽なのでAT車派が多いけれど、(私みたいに)MT車ならではの特性か好きで、MT車にこだわり続けて(古い車のエンジンを積みかえてもらってまで乗り続けて)いる人も少数だけれどいるのでは?

 MT車(発達障害の脳)に当たっちゃった人が、MT車のメリットもデメリットも合わせた特性(自分の特性)を理解して、AT車(定型発達の人)とは違うところも含めて、それでもMT車(発達障害の自分)が好きと思えるようにになれるといいのになぁ…と思います。 

 

最後にクイズです。
この記事に使われている車の運転席(コックピット)の画像①~⑦のうち、どれがAT車でどれがMT車でしょうか?
(画像をクリックすると拡大画像に飛びます)
答えは↓から…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

答え:

①ミニクーパー、2006年、MT車

 ギアの表示されたシフトレバー(大きい楕円)とちょこっと写っているクラッチ(小さな楕円)

 

 

 

 

 

②コルベット、第3世代C3、MT車

 ギアシフトレバーの横のギアの配置の図

 

 

 

 

 

 

③サンダーバード、第3世代、AT車

 ブレーキペダルとアクセルペダルの形
(クラッチペダルがついていない)

 ハンドルに変速シフトレバーのついているタイプ

 

 

 

 

④ムスタング、初代、AT車

 ブレーキペダルとアクセルの形
変速シフトレバーの形

 

 

 

 

 

⑤コルベット、初代C1、MT車

 ペダル類が暗くて写っていないのでわかりにくいのだけれど…
 ギアのシフトの配置図から
(レーシング仕様だからか、後で改造したからなのかわからないが6速ギアになっている
普通C1は4速ギア)

 

 

 

 

⑥デロリアン、MT車

 ペダルの形状から、アクセルペダルとブレーキペダルとクラッチペダルが並んでついている。

 

 

 

 

 

⑦ベルエア、初代、AT車

 ブレーキペダルとアクセルの形状

ハンドルに変速シフトレバーのついているタイプ

 

 

 

 

 写真の写りが悪くてわかりにくいのですが、いくつ正解だったでしょうか?

 この記事を書くよりも、クイズに使ったコックピットの画像のATかMTかの判明と画像の加工に時間がかかってしまいました。
(;´▽`A``

 

 

 

4 件のコメント:

  1. アールグレイ2024年12月1日 2:43

    この説明もわかりやすいですね。
    実は、先月、次男が注意欠陥障害のお墨付きをいただきました。正式な診断ではないのですが、専門医の先生が「まず間違いない」って。
     

    複式学級で一年間。
    今まで、AT車に何とかついていっていた運転では、ついていけなかったところが露呈し、あちこちに相談したら、診断がついちゃった(どういう顔をすればいいのやら)
     
    この診断をもって、中学校に入学しましたら、先生方の手厚いこと!
    少人数学級(13人)も手伝ってMT車の扱いを心得てくださっています。
    良い3年間が送れると良いです。

    投稿: アールグレイ | 2017年4月15日 (土) 16時37分

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    1. >アールグレイさん
       訪問&コメントありがとう〜
       次男君の診断がついたのですね。
      発達障害は外から見えないので、診断がつきにくいですよね。
       うちの息子もちゃんとした診断がついたのは、高校入学直前(日本の中学2年の春)でした。
       最近の日本の学校は発達障害の生徒にもちゃんとした配慮が受けられるのですね。
      本人にとって納得の行く中学生活が送れるといいですね。
       
      投稿: yuuki | 2017年4月18日 (火) 04時37分

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  2. この例えなら、MTの操作能力が、発達障害のある人を活用する上司などに必要という話ですね。
    車の進化と逆だけに、管理者の育成は難しいものがありますね。

    投稿: 正体不明 | 2017年4月16日 (日) 08時01分

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    1. >正体不明さん
       訪問&コメントありがとうございます。
       例えなので全ての事象には当てはまらない部分もあるのが苦しいところです。
       発達障碍者は兎に角誤解を受けやすいので、上司や指導者に当たる人はマニュアル車が運転できなくても、特性や仕組みがある程度分かっていればいいのかと…

      投稿: yuuki | 2017年4月18日 (火) 04時37分

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